物流企業の自社外航船「KIZUNA 21」に乗船してみた
KONOIKEグループの船舶業務には、50年以上の歴史があります。昭和50年代の初め、当時の海務課(現在の外航海運課)が船内荷役業務を請け負っていた船会社から船舶を譲り受け、独自で船舶運航業務を開始したことがきっかけでした。当時は、日本からの輸出で雑貨・鋼材などを、また台湾からの輸入で、バナナ、梅、雑貨、鋼材を運んでいたそうです。
1996年のMERCURY SEVENにはじまり、翌年に2隻を投入、2001年にはVENUS SEVENを出船し、一時は4隻体制で運航していました。しかし、時代の流れとともに返船・売却を経て、最後に残ったVENUS SEVEN の代替船として、2021年に造船されたのが「KIZUNA 21」。50年の変遷の後、現在KONOIKEグループが所有する唯一の在来船(コンテナ船の規格に収まらない重厚長大な貨物を運ぶ船)なんです。
一度乗船すると半年以上の乗船勤務が続く航海士という仕事。「家族や友人と会えないのは寂しくないですか?」という素人感丸出しの質問に対しては、「最近はSNSがあるから大丈夫!」と余裕の笑顔。どうやら、インタビューの前も家族とチャットしていたようです。
KIZUNA 21のクルーは現在18名(取材時)。全員がフィリピン国籍です。クルーとのコミュニケーションのコツは、行事ごとを大切にすること。クリスマスや新年、クルーの誕生日には、船上デッキで盛大なパーティーを催すそうです。外航海運課とはすでに5年以上の付き合いのあるダボンさん。クリスマスには、外航海運課からパーティー用の豚を一頭丸ごと贈るのが恒例になっているとか!
これからも安全・確実な操舵で、KIZUNA 21をよろしくお願いします!
よっしー)
物流企業の中でも自社で外航船をもつ企業は非常にレアですよね。
自社船を持つメリットは何ですか?
向課長)
一番のメリットは、スケジュールの融通が利くこと。これはお客さまにとっても、当社にとっても利点になります。他社船の場合、いつ入港するのかを簡単に知ることはできませんが、自社船の場合、船の現在地や待ち時間をリアルタイムで把握できます。また、数カ月先の運航スケジュールも見通せるので、半年や一年先の運航計画を必要とする大型プロジェクトにも円滑に対応できます。外航船のマーケット市況に左右されにくいことも挙げられますね。運賃を自分たちで決められるため、価格高騰が極まったコロナ禍でも運賃は比較的安定していました。
よっしー)
他にも自社の強みはありますか?
向課長)
岸壁の目の前に南港外貿営業所のL-1倉庫という自社の保税倉庫があり、陸揚げした貨物やこれから船積みする貨物を一時的に保管することも可能です。荷主のリードタイムを調整することもできるので、より柔軟な対応が実現できます。
よっしー)
船から倉庫まで一元管理、「すべてKONOIKEにお任せ!」ですね。
まさに順風満帆なKIZUNA 21ですが、現状の課題はありますか?
向課長)
課題は色々とありますが、主に2つです。
1つ目は技術伝承です。港湾業務も成り手が少なく、先輩後輩の年齢差もあります。例えば、フォアマンの馬渡の後輩は今年入ったばかりの新入社員です。仕事を覚える方法も、これまでは背中で見て学ぶというやり方が主流でしたが、これからは言葉を使って丁寧に教えることが当たり前になりつつあります。
2つ目はKONOIKEグループ内での連携。残念ながら、グループ全体としてKIZUNA 21をフル活用できているかといわれると、そうではないのが実態です。外航海運課が事務所を構える建物内には、お客さまの貨物の輸出入を支援するフォワーディング業務を行う部署もあり、台湾に貨物を送りたいというお客さまからの依頼も一定数あります。フォワーディング部門の営業担当と、より連携を密にすることで、他部署のお客さまからの引き合いに対して、KIZUNA 21を輸送手段の一つとしてご提案できるようにしていきたいです。
よっしー)
お客さまはKIZUNA 21のどんな点を評価していただいていますか?
向課長)
規格外の重量物を運航する定期在来船というのは、非常にニッチな市場です。そのため、定期船と名乗ってはいても定時に来ない、運賃も市況に大きく左右されるといった船会社もあるなか、毎月決まったスパンで運航し、価格も変わらない点がお客さまには喜んでいただいています。
「まあ、定期的に船が来るのは、当たり前のことなんですけどね」と笑う向課長。
一隻の船が出帆して、トラブルも遅れもなく、帰港すること。その当たり前を当たり前にするために、多くの人が関わっていることを学んだ一日でした。